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北陸建設アカデミー

新潟県胎内市にある「北陸建設アカデミー」は、建設業界の人材育成を担う認定職業訓練校等のひとつです。実践的な研修と資格取得支援を通じて、地域に根ざした人材を育てています。今回は、同アカデミーの代表理事である小野貴史さんと、ディレクターの中山智之さんにその設立の経緯や取組み、そしてアカデミーを通じて伝えたいメッセージを伺いました。




  • 小野 貴史 氏

    ・ 一般社団法人北陸建設アカデミー 代表理事
    ・ 株式会社小野組代表取締役社長

  • 中山 智之 氏

    ・ 一般社団法人北陸建設アカデミー ディレクター
    ・ オノエンタープライズ株式会社 取締役社長




建設業の未来を見据え今、地元で育てるという決断

── Q. なぜ、北陸建設アカデミーをつくろうと考えたのですか?

 建設業界では、ずっと前から「人手が足りなくなる」と言われていました。特に新潟県北部は高齢化率も高く、若い人はどんどん都市部へ流れていきます。かつては250万人いた県民も、今は200万人ほどになっているという現実があるなかで、会社説明会を開いても学生たちはなかなか興味を持ってくれない。かつては求人を出せば応募があったのに、それもまったく通用しなくなりました。
 そんなときに気づいたのは、協力会社さんの厳しい状況でした。現場に出ながら、経理は家族にお願いし、求人票を出すのも手一杯。面接のノウハウもなく、入社しても3日で辞めてしまうことも珍しくない。「このままだと廃業するしかない」という切実な声を聞いて、まず始めたのが求人活動の支援でした。しかし、今度は入社後の体系的な育成方法がなく、人材が育たない現状があり、教育の場がどうしても必要だと思ったのです。
 そこで、全国の訓練施設を視察しながら、「地元に訓練の場をつくろう」と決意しました。職人を目指す方たちは、地元志向がとても強い。ならば、地元に訓練施設をつくるべきだと。ちょうど、胎内川の上流にあったダムの管理事務所が不要になると知って、「これを活用できたら」と動き出しました。市や県とも交渉し、建物や土地を取得。多少手直しは必要でしたが、2020年、コロナ禍の最中に「北陸建設アカデミー」がようやくスタートしたのです。



通年運営で資格取得と就職の両面を支援

── Q. 北陸建設アカデミーならではの特徴は、どんなところにありますか?

 北陸建設アカデミーの大きな特徴は、通年で訓練を実施していることです。多くの訓練施設が期間限定で講習を行うなか、私たちは年間を通して事務員も指導者も常駐し、継続的に研修を行える体制を整えています。冬には雪が積もりますが、逆にその時期を活かして除雪作業の訓練をすることも可能です。雪は動かしても自然に消えるため、土とは違った訓練が可能で、冬場でも効率よく実習を行うことができます。
 また、他の特徴としては、技術の習得だけで終わらせない「出口支援」の考え方です。私は北陸建設アカデミーの設立にあたり、キャリアコンサルタントの国家資格を取得しました。就職先につなげ、長く働けるようにサポートするには、進路支援の視点が不可欠だと考えたからです。「経営者がなぜこの資格を?」と驚かれましたが、私にとっては必要な学びでした。単に技術を教えるだけでなく、ハローワークと連携して、職業訓練を「働く力」として根付かせることを目指しています。技術も就職も、どちらか一方ではなく、両方に本気で向き合う場所でありたいと思っています。



「選ばれる側」ではなく「選ぶ側」の自信を育てる

── Q. 訓練生と向き合うなかで、大切にしていることは何ですか?

 私たちは、訓練生一人ひとりと面談の時間を設けています。単に資格を取るだけでなく、社会に出る前の“心の準備”もとても大切だと思っているからです。実際に、これまでひきこもりだったり、何度も転職を繰り返してきたりした方たちは、自分に自信を持てない状態でやって来ることが多い。そんな彼らにまず必要なのは、「あなたには力がある」と伝えること。だから私は、キャリアコンサルタントの資格を取り、自ら面談を行っているのです。
 こちらでは社労士にも協力してもらい、履歴書の書き方や面接の練習、模擬面接なども行います。企業の方々にも来ていただき、説明会を開いています。ただの資格取得ではなく、就職までしっかりサポートする。これが、北陸建設アカデミーのあり方です。
 面談では訓練生に必ず言っていることがあります。「あなたが企業を選ぶんですよ」と。多くの方は、面接に行くことを「選んでもらう場」だと思い込んでいます。でも本当は、選ばれるだけではなく、自分に合った職場を選ぶ権利がある。今の建設業界は人手不足です。だからこそ、自分のスキルや希望をしっかり伝え、合う会社を見極めてほしい。自信を持って「あなたの会社では、こういうことができます」と話せるようになってほしいのです。
 建設業といっても、重機に乗りたい、鉄筋をやりたい、型枠を学びたいなど、それぞれの思いや適性があります。その声をきちんと聞き取り、“水先案内人”として導いていくのが私たちの役割だと考えています。



建設業界の人材育成に新しい教育インフラを

── Q. 今後、建設業界にどのような教育が必要だと考えていますか?

 北陸建設アカデミーでは、建設現場で長年働いてきた人が講師を務めています。経営者や部門長といった現場の最前線にいた人が、技術だけでなく、建設の魅力ややりがいを伝えてくれています。こうした訓練施設は現在、全国12団体で構成される「全国建設関係訓練校等連絡会議」においても、建設業の教育訓練機関として同じ志でつながっています。それぞれの地域の特性を活かしながら、建設業界の人材育成に取り組んでいます。
 これから重要なのは、技術だけでなく“人間力”も育てる教育です。そのためには、教える側のスキルも磨かなければいけません。リスキリングやキャリア教育の要望が多いなか、私たち訓練校等がその受け皿になっていく必要があると思っています。
 建設業界は今、江戸時代のような状況にあると感じています。教える内容も方法もバラバラで、各自が独自に工夫しているだけ。けれど、本当に必要なのは明治維新のような抜本的な教育改革です。昔の日本がそうだったように、全国に学校を整備し、教育システムを作る。そして、教える人を育てる師範学校を設ける。建設業界にも、そうした教育インフラが必要なのです。北陸建設アカデミーは現在、人間力のある講師に恵まれましたが、全国で広げるには仕組みづくりが欠かせません。この学校が、その基軸になるよう動いていきたい。微力ながら、力を尽くしていくつもりです。
 洋上風力発電や半導体、感染症対策施設など、これから日本ではさまざまな国家プロジェクトが本格化していきます。こうした新しい建設ニーズに対応するためには、それぞれの現場に特化した専門的な教育が欠かせません。アメリカではすでに、建設シーンごとに訓練施設が整備され、たとえばクリーンルームの施工一つとっても、専用の教習や教材が用意されています。一方、日本ではまだ「家を造れるなら、他も造れるだろう」といった経験頼みの教育が多く、効率的とは言えません。私は、こうした現状を変えていくために、北陸建設アカデミーを現場の経験だけに頼るのではなく、計画的に学び、構造的に成長していけるような教育を提供する拠点にしていきたいとも考えています。



建設業と福祉・地域の連携
職業訓練校等の新たな取り組み

── Q. 働きづらさを抱える方への支援についてお聞かせください

 北陸建設アカデミーでは、2023年から地域若者サポートステーション(サポステ)との連携を本格的に始めました。職業訓練を進めるなかで、働くことに悩みを抱える方が一定数いることに気づいたのがきっかけです。教育機関やハローワークの担当者と話をするなかで、「建設業で働きたい」という気持ちを持つ方がいる一方で、就職先の選定に苦労している実態を知りました。
 企業側も、労働力人口が減少していくと見込まれるなか、インフラの老朽化や災害などへの対応による建設需要の高まりを受けて、地域の建設業にとっても今後ますます人手不足が顕著になっていくと考えられます。そこで私たちは、「資格を取ってから社会に出る方が自信につながり、就職しやすいのでは」と提案し、訓練の場を提供するようになりました。
 軽度の発達障害やひきこもり経験があっても、手に職をつけ、実践的な訓練を積めば働ける力はある。その思いのもとで受け入れを進め、必要に応じて企業とのマッチングも支援しています。



資格の先にある成長を一人ひとりと向き合って

── Q. 訓練生との関わりで意識していることは?

 私は、訓練生と接する時、いつも自分のほうから歩み寄る姿勢を大切にしています。こちらから接することをやめてしまえば、誰も心を開いてくれません。冒頭で訓練生に必ず伝えるのは、「建設業に限らず、社会で重要なのはコミュニケーション能力です」ということ。まずはあいさつをきちんと交わす。そこから会話が生まれ、相手を知るきっかけになります。最初はみんな他人同士です。でも同じ空間で一緒に時間を過ごすことで、知人になり、つながりが増えていく。気づけば、点でバラバラだった人たちが線になり、チームとして助け合うようになるのです。そんな変化を見るたび、人は変われる、と感じています。
 アカデミーでは、資格取得はゴールではなく、あくまで通過点です。入口は「資格を取りたい」でも、目的のひとつには「自分を変えたい」という気持ちがあるからです。だからこそ私は、資格を通じて自信をつけるきっかけを提供したいと思っています。近年、女性の参加者も増えてきました。「女性だから」と門を閉ざされてきた方も、「ここで資格を取って、自分を認めてもらえるようになりたい」と話してくれました。ある訓練生からは、修了後に手紙をもらいました。とても丁寧な内容で、「ここに来て本当によかった」と書いてありました。あの手紙は、今でも忘れられません。これからも、一人ひとりの思いにしっかり寄り添いながら、資格だけでなく“前に進む力”を一緒に育てていきたいと思っています。



地域若者サポートステーションとは?

 地域若者サポートステーション(通称サポステ)は、15歳から49歳までの”「働く」への一歩を踏み出したい”方たちを対象に、就労に向けた支援を行う厚生労働省委託の機関です。全国177カ所(2025年4月末時点)に設置され、専門スタッフによる個別相談、コミュニケーション講座、就業体験(ジョブトレ)、ビジネスマナー講座など、多彩なプログラムを提供しています 。
 「働きたいけれど自信がない」「人間関係が不安」など、さまざまな理由で一歩を踏みせない方々に対し、サポステは「働き出す力」を引き出し、職場への定着までを全面的にバックアップします。就職後も継続的なフォローアップを行い、働き出してからの悩みや不安に対しても、しっかりとサポートしていきます。





北陸建設アカデミー|施設紹介


  • ▲車両系建設機械/振動ローラー 実技コース

    初心者の方も安心して受講できるよう安全対策に配慮したコース設計です。

  • ▲小型移動式クレーン/玉掛け技能講習 実技場

    クレーン操作未経験の方にも理解しやすい講習を行います。



  • ▲車両系建設機械(解体用) 実技場

    解体に使用するフォークとブレーカを使い、重機の操作を学びます。

  • ▲足場の組立て 実技場

    足場の組立て作業を安全に行うための責任者を育成。



  • ▲実技室

    悪天候に備え、屋内実技室を整備。講習プログラムが天候に左右される心配はありません。

  • ▲タイヤショベル

    力強く土砂をすくい運ぶ重機。操作性が高く、建設や除雪に活躍。



  • ▲教室

    第1教室は少人数対応、第2教室は最大54名収容の多目的空間。

  • ▲カウンセリング室

    面談で社会への一歩を支援。これからの働き方を一緒に考えます。



  • ▲重機訓練シミュレータ

     重機操作を体験できます。イベント・各種行事の際は出張設置も可能。



~ 建設業のプロになれる ~
仕事に役立つ技術を学び、専門知識を身に付ける場所

 国内には、都道府県知事の認定を受けた訓練カリキュラムにより、企業の従業員などの人材育成を行う職業訓練施設があります。建設業で働くための基礎知識や技能の習得、資格取得が目指せるものも多くあり、これらの施設では、経験豊富な指導員の指導をうけ、一緒に学ぶ仲間たちとも交流し、働きながら訓練を受講することが可能です。また、訓練を終了すると、技能検定の受検に必要な経験年数の短縮や、試験の一部免除などもありますので、「手に職をつける」「安心して働くことができる」「資格をとってキャリア形成ができる」が実現できる職業訓練施設です。





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